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英国に学ぶインパクトファーストな投資事例

昨今、インパクト投資市場が国内外で急拡大をしています。インパクト投資に投下された資本総額を示すインパクト投資残高は、2023年度の日本で11兆5,414億円(昨年比197%)と、1年前より197%拡大しています。
(出所)『日本におけるインパクト投資の現状と課題 2023年度調査』(一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)発行/GSG国内諮問委員会 監督)

市場の拡大と合わせて、インパクト投資という言葉は徐々に認知も広がりつつあります。一方で、インパクト投資とは何か、何がインパクト投資なのか、という認識は、同領域内で活動する投資家の間でも分かれ、時に議論を呼ぶこともあります。


インパクト投資の特徴の1つは「多様である」ということ

これは、インパクト投資の特徴の1つである「多様である」ということが背景にあります。金融庁が2024年3月に公開した「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針」では、現在インパクト投資とみなされているものには、投資先・投資主体・アセットクラスが様々に存在することが記載されています。

本指針では、国際的な議論も踏まえ、社会・環境的効果と収益の双方を実現する投資の基本的考え方は、投資先・投資主体・アセットクラスの別に関わらず基本的には共通であるとの理解に立って、対象を限定せず幅広く包摂して 記述している。
投資先については、業種、規模、上場・非上場企業双方を含む成長段階 、営業地域(グローバル・都市・地域等を問わず幅広く含まれるものであり、投資主体についても、アセットオーナー、金融機関、ベンチャーキャピタル、 プライベートエクイティファンド、財団など多様な主体の参入が見られており、対象を一般的に限定していない 。

(出所)金融庁「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針」(2024)

また、収益性についても同様です。収益性目標が市場収益率と同等以上の実現を目指すものから、あえてそこを目的にしないものまで含まれ、それぞれが尊重されるべき、という記載があります。

収益性についても、インパクト投資には、現に、市場収益率と同程度以上の収益率の実現を目指すもの、市場収益率等の実現を敢えて目的としないもの(例えば、開発金融等で見られるいわゆる譲許的(concessional)ファイナンス)など、様々なものが存在し、各主体それぞれの目的・取組みが尊重されるべきものである。

市場収益率を下回る収益率を目標とする又はポートフォリオ全体としても許容する「インパクト投資」もあり得るものであり、市中協議でも、譲許的なファイナンスが、インパクト投資に関心を有する一般の投資家へのリスク補完等の観点から重要な役割を果たしてきた旨の指摘があった。

(出所)金融庁「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針」(2024)
太字は編集チーム付与

JANPIA出資事業部が23年度に公募した出資事業でのLP投資家としての立ち位置は、この「譲許的な資本」の一部です。上記指針の策定の際に寄せられたパブリックコメントの内容を具体的に見てみると、譲許的な資本は多くの場合、以下のような役割を果たしているようです。

  •  十分なサービスを受けていないニーズ(underserved needs)に対応する事業への資本の流れを可能にする

  •  インパクト投資を行うとするものの、伝統的な投資家から資本を引き出す上で、最初の損失やリスクの上乗せが必要な場合に、重要な役割を果たしている

 このように、インパクト投資と一言で言っても、財務リターンを優先する(Financial First)ものから、インパクトを優先する(Impact First)ものまで、多様に存在しています。

先進的な取り組みが進む、英国の投資事例をご紹介

しかし、日本国内ではImpact Firstに近い事例はそこまで豊富に存在せず、目にすることができるものも限定的です。そこで、具体的にどのようなインパクトファーストなファンドが存在するのか、どのようなインパクト投資が行なわれているのかについて、先進的な取り組みを進めている英国の各種事例を、順次ご紹介していきます。

なお、本事例の調査は、英国在住の城守鈴果氏の協力を得て実施しました。
城守氏は、新卒で三井住友銀行にて融資・貿易金融等を経験後、2020年英国へ移住。米銀勤務ののち、インパクト投資へのキャリアシフトのため英On Purpose Associateプログラムへ参加。老舗社会的インパクト投資ファンドのBig Issue Invest、The Social Investment Consultancyに半年ずつ勤務し、現在は英国老舗チャリティーにてヘルスケアベンチャーへのインパクト投資業務に従事されています。

記事構成・編集:JANPIA出資事業部note編集チーム


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